『モアナと伝説の海』③モアナの成長と変化

モアナと伝説の海

はじめに

※本記事には『モアナと伝説の海』のネタバレを多く含みます

※続編『モアナと伝説の海2』のネタバレ情報はありません

みなさん、こんにちは!

ディズニー映画 魅力発掘隊のミンキーです!

ミンキー隊長
ミンキー隊長

今日も2016年公開の『モアナと伝説の海』について語っていくよ!

画像出典:ディズニー映画『モアナと伝説の海』公式サイト

前回の記事では、ディズニー映画『モアナと伝説の海』を初めて観たときの印象と疑問点について紹介しました。

クマキー隊員
クマキー隊員

前回あげてた疑問ってどんなものがあったクマー?

リスキー隊員
リスキー隊員

確か…
①「私はモアナ」の意味とは?
②マウイはなぜモアナのもとへ帰ってきたのか
③「海」の存在とはなんだったのか

の3つだったよね!

ミンキー隊長
ミンキー隊長

そう!
この疑問点を解消するために
今回は「モアナ」に焦点をあてて考えていくよ!

画像出典:ディズニー映画『モアナと伝説の海』公式サイト

前回の記事で述べた通り、初めて観たときは、「よくわからないセリフだなー」とか「「ご都合展開が続くなー」なんて感じてしまっていました。

しかし!

改めて見直してみるとそんなことは全くない、めちゃくちゃ魅力的な作品だったことに気付けました。

この作品において「モアナの成長と変化」について考えておくことで、続編『モアナと伝説の海2』をもっと楽しむことができるはずです(^^)/


モアナの成長の過程

モアナがどのように成長し、彼女にどんな変化があったのか。

この記事では、以下の5つの場面に分けて、本編中の描写をもとにじっくり考察していきます。

本記事では、制作陣の意図や裏話を紹介するのではなく、本編中のセリフや音楽、描写などから物語の考察を行っていきます

モアナの成長過程
  • 幼少期
    海への強い憧れ
    幼少期、物心がつく前のモアナはどんな少女だったのでしょうか。
    役割や使命を託される前に、彼女自身が持っていた本質について考えます。
  • 冒険前
    海への想いと村を守る責任
    父から受け継ぐ村長の娘としての役割。愛する島の人々からの期待。
    祖母から伝えられる『本当の自分』の存在。自分を呼ぶ「海」の声。
    相反する思いが交差し、葛藤する彼女の決断とは?
  • 冒険中
    旅立ちと試練
    祖母から託された使命を胸に旅立ったモアナを、数々の試練が待ち受けます。
    頼もしい相棒との出会い、衝突、絶望…。
    冒険の旅は、彼女にどのような影響を与えたのでしょうか。
  • 転換点
    本当の自分を見つける瞬間
    「マウイを連れてテ・フィティの心を返しに行かせる」
    その重い責務を一度は諦めかけるモアナ。
    その後、もう一度彼女がテ・カァに立ち向かおうと立ち上がるのに、どのような心境の変化が…?
  • 冒険後
    心の声に従って生きる
    長い冒険を経て、彼女が得たものとは。
    『モアナと伝説の海』が持つ大きなテーマに触れながら解説していきます!

海への強い憧れ

本作は、モアナの祖母タラが、「テ・フィティとマウイの伝説」を語るシーンから始まります。

島の子どもたちに伝説を語って聞かせるタラおばあちゃん
ディズニープラス公式Youtube
モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


祖母が語る海の伝説の恐ろしさに、周囲の子供たちは泣き出し、気を失ってしまう子までいます。

しかし、そんな中、幼いモアナだけは、そんな話を目を輝かせながら聞き、まさに興味津々といった様子です。

そんな彼女の様子から、物心のつく前から「海や外の世界に対する強い憧れ」を抱いていることが伝わってきます。

また、そういった思いを抱いているような人物は、この島内では大人を含めても彼女以外に見当たらず、モトゥヌイ島においてモアナがどれだけ特別な存在であるかがわかります。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

タラおばあちゃんも
「海とともに歌って踊り、好きに生きる」といった
スタンスのように見えるから、モアナがもつ
「強い憧れ」とは少し違いそうだね!

また、幼いモアナに対して、島の人々が「新しい歌はいらない」と歌うシーンがあります。

この「現状に満足し、新しい変化を嫌う」という性質は、現代にも重なる多くの人々の心情を映しているように感じますね。

タラの話に怖がる子どもたちの中、ひとりだけ興味津々のモアナ
ディズニー公式Youtube
ディズニー・ミュージック・ショーケース/いるべき場所|ディズニープラス


そんなモアナは、村長である父トゥイの目を盗み、ひとり海岸へ訪れます。

そこで、波に流されそうになっている綺麗な貝殻を見つけ喜ぶモアナですが、同時に、複数の鳥に襲われそうになっている子ガメも発見します。

自分の興味をそそる美しい貝殻と、今にも襲われそうになっている子ガメ。

一瞬悩む素振りを見せますが、彼女はすぐに子ガメを救い、海へと放してあげます。

驚くことに、まだオムツを履いているような頃から、彼女には

「自分が望むものよりも救いを求める存在を優先し、自分が守れるものを守ろうとする強い意志

があることがわかります。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

こんなに小さい頃から
既に村長の娘としての素質が感じられるね!

その後、「海」はモアナを誘い、貝殻とともに「テ・フィティの心」を授けます。

このとき、彼女が子ガメを助けていた姿を「海」はしっかりと見ていたはずです。
「海」がなぜモアナを選んだのか、「海」は何を考えているのかなどについての考察は、次々回の記事でお伝えする予定です。

子ガメを助けたあと、「海」と出会うモアナ
ディズニープラス公式Youtube
モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


幼い頃のモアナを、両親や島の人々が歌と踊りを楽しみながら導こうとするシーンが描かれています。

しかし、そんな様子には目もくれず、モアナは何度も海を目指し歩みを進めます。

成長するにつれ、村長の冠を父に見せられたり、ココナッツの有益性を語られたりするモアナですが、そのときの彼女は顔をしかめています。

この頃の彼女は、村を守る「村長」という役割を、大好きな「海や外の世界への冒険」よりも優先しなければいけない理由がよく理解できていないのでしょう。

父に冠を見せられるもその魅力を上手く理解できないモアナ
DisneyMusicVEVO Youtube
Where You Are (From “Moana”/Sing-Along)


島の人々が愛している歌や踊り、暮らしを守る役割よりも、海に対する憧れや、遠い世界への冒険に対する思いが強い様子が描かれています。

幼い彼女は、どれだけ父や周囲の人々に言葉で説明されようと、その重要性がうまく理解できないのです。

そんなある日、海辺で踊る祖母のもとへ訪れたとき、祖母の歌を聞きます。

日本語歌詞

ダンスするのが好き
波と戯れて
海はいたずら
そこがかわいい

みんなは私に
顔をしかめる
でも好きなことをするの


父親に似た頑固な子
でも心の声に気がついたなら
すぐ従いなさい
囁く声は 本当の自分
お前なの

英語歌詞&日本語訳(ディズニープラス 日本語字幕 参照)

I like to dance with the water 
The undertow and the waves 
The water is mischievous   
Ha! I like how it misbehaves

海で踊るのが好き
潮と波と
海はいたずら好き
それもまたいいさ

The village may think I’m crazy
Or say that I drift too far
But once you know what you like, well
There you are

村では私は変わり者
奇想天外らしいけど
好きなものが分かれば
怖い物なしさ


You are your father’s daughter
Stubbornness and pride
Mind what he says but remember
You may hear a voice inside
And if the voice starts to whisper
To follow the farthest star
Moana, that voice inside is
Who you are

お前は村長の娘
頑固で誇り高く
父親の話を聞いて
自分の心の声
遠い星を追えと
心がささやいたら
その心の声
本当の自分

周囲の目や声に惑わされることなく、自分の心の声に従って生きる祖母タラ。

そんな祖母から話を聞くとき、モアナの表情はとても穏やかです。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

村長の話を聞いているときとは大違いだね!

いつも海が自分を呼んでいる気がしているモアナにとって、「自分の心に従って生きる」祖母の姿はとても魅力的に映っていたことでしょう。

ここで祖母から語られる「心の声こそが本当の自分」というメッセージは、作品全体を通したメッセージと言ってもよさそうですね。

海辺で踊るタラおばあちゃんから話を聞きながら踊りを習うモアナ
DisneyMusicVEVO Youtube
Where You Are (From “Moana”/Sing-Along)


しかしこの後、モアナは父に連れられて、歴代の村長たちによって積み上げられた石が置かれる山頂へ行きます。

積まれた石は下に行くほど苔むしていて、長い時間をかけてこの島が繁栄してきたことを表しています。

この長い期間、この島で平和に暮らしてこれたのは、村長が民を守るために尽力してきたから。

モアナは石を撫でながら、村長という役割の尊さや島の人々の思いに触れ、初めて真に自分に期待されている役割を理解します。

この瞬間、モアナは「自分は村を守るべき存在なのだ」と自分の役割を認識し、その役割を果たそうと努力し始めます。

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歴代の村長たちによって積まれた石から、自分に期待されている役割を初めて理解する
DisneyMusicVEVO Youtube
Where You Are (From “Moana”/Sing-Along)


海への想いと村を守る責任

モアナは自分の役割を果たそうと決意し、島の生活に積極的に関わるようになります。

ココナッツの加工や踊りにも参加し、島の人たちと笑顔を交わしながら日々を過ごします。

モアナ
モアナ

外にはいかないわ。

島の人たちといつまでも暮らすの。ここで。

彼女が心から島の人々を愛し、村長としての役割を全うすることで周囲の期待に応えようとする姿が描かれています。

彼女は仕方なく村長としての役割を引き継ごうとしているのではなく、心から島の人々や島の暮らしを愛していて、そのために必死に自分の役割を果たそうとしています

周囲に期待されている役割を果たそうと島の人々と踊るモアナ
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Where You Are (From “Moana”/Sing-Along)


しかし、心の中では海への憧れを完全には消し去ることができません。

周囲の期待に応えることを優先しているものの、心の奥底ではまだ海に憧れているのです。

この姿は、映画冒頭で幼いモアナが子ガメを助けたシーンでも描かれていたように、やはり彼女には

「自分が望むものよりも救いを求める存在を優先し、自分が守れるものを守ろうとする強い意志

があるのだということを感じさせます。

あの頃、子ガメを助けるために一度諦めた美しい貝殻のように、彼女は自らが持つ「海への強い憧れ」を心の奥にしまい込むのです。

民の期待に応えるよう努力しながらも、一瞬 海と祖母に切ない表情を向けるモアナ
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Where You Are (From “Moana”/Sing-Along)


そんなモアナは、魚が捕れなくなって困っている漁師たちに、サンゴ礁の外へ漁をしにいくことを提案します。

それを聞いた村長である父トゥイは激昂し、サンゴ礁の外へ行くことを厳しく禁じます。

そんな父に納得のいかないモアナに対し、母シーナが諭します。

人はなりたいものややりたいことがあっても、ときには叶わないことがある

この母シーナの言葉は、ディズニー作品で度々語られる「夢は叶う」というメッセージとは真逆です。

しかし、この言葉は人間の心情をとてもリアルに表しています。

母シーナが、悪意からではなく、完全な善意でモアナに告げているという点も大きなポイントでしょう。

一筋縄ではいかない現実を目の当たりにするモアナの葛藤を、最もよく表現しているのが、映画の中で歌われる「How Far I’ll Go(どこまでも)」のシーンです。

母から投げかけられた言葉に深く悩むモアナ
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Auli’i Cravalho – How Far I’ll Go (from Moana/Official Video)


モアナは、必死に島の人々からの期待に応えようとする中でも、なぜか何度も海に来てしまうことを不思議に思っています。

彼女は長い間、なぜ自分がここまで海や遠くの世界に無性に惹かれてしまうのかという謎に悩み続けているのです。

「海の向こうに漕ぎ出せばきっとわかる」

そう思っているものの、自分に期待してくれている島の人々を裏切りたくない。

ペットである子豚プアにオールを渡され、笑顔で受け取るものの、島と見比べ、結局オールを浜辺に置いて島の方へと戻ってしまいます。

心の底では海や遠くの世界へ飛び出したいという思いがあるものの、その気持ちを押し殺して自分の役割を全うしようと葛藤する姿が鮮明に描かれている場面です。

オールを砂浜に置き、島の人々のもとへと戻るモアナ
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Auli’i Cravalho – How Far I’ll Go (from Moana/Official Video)


この曲の歌詞からも分かる通り、彼女は島の人々の暮らしを全く否定していません。

それぞれの役割をもち、その役割を全うすることで人々の役に立ち、自身は満たされる。

そして、過去から現在まで、モトゥヌイ島という共同体が平和に保たれてきた。

そのことを頭では理解しながらも、どうしても心に響くのは「海」が自分を呼ぶ声。

そんな葛藤を抱えながらも、「海が私を呼んでいるのだ」と、彼女は海へ走り出し、サンゴ礁を越えることを決意します。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

村長の証である冠に目を向けず走り続ける姿は
モアナが「期待される役割」よりも
自分の心」に正直に従おうとする様子が
巧みに表現されているね!

冠には目を向けず、海へと駆け出すモアナ
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Auli’i Cravalho – How Far I’ll Go (from Moana/Official Video)


しかし、サンゴ礁を越えたところで、モアナの乗る舟は波にのまれ、海の厳しさを突き付けられます。

特に、子豚プアが溺れ、オールを怖がる姿は、「自分が守れるものを守ろうとする意志」をもつ彼女にとって辛いものであったでしょう。

この失敗を経験したモアナは、父の教え通り海を危険なものと見なし、歴代の村長の石に自分も石を積むことを祖母に告げます。

「そこへ漕ぎ出せば何もかもが上手くいく」と思っていた海から目をそらすモアナの表情は、暗く曇っています。

その後、モアナは祖母タラに祖先が使っていた多くの舟を見せられます。

タラおばあちゃんに連れられた洞窟でたくさんの舟を見つける
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Yoshito Fuchigami, Hiroaki Takeuchi – もっと遠くへ (From “Moana”)


そこで、自分たちの祖先である彼らが、多くの舟を使って、大海原を自由に渡り、島から島へと旅を続けていた過去を目にします。

彼らはみな活力にあふれた表情をしており、老若男女問わず生き生きとしています。

波に揺られ水しぶきを身に浴びながらも、笑顔で歌いながら荒波を越えていく彼らの姿は、モアナの心を強く揺さぶります。

モアナにとって、幼い頃からの「なぜ自分は海や遠くの世界に憧れるのか」という疑問の答えがここで見つかったのです。

海が自分を呼んでいると感じ続けたのは先祖から受け継いだものだった

ということを知ったモアナは、このときどう感じたでしょう。

そもそも、幼い頃から抱き続けてきた「海への憧れ」を心の奥底にしまい込むようになったのは、祖から引き継がれてきた村長の石に触れたときからです。

島の人々を愛しているからこそ、先祖代々繋いできた営みや思いを大切にしたい彼女だからこそ、歴代の村長の思いを受け継ぐために、いつまでも島で暮らすことを決意していました。

しかし、蓋を開けてみれば、先祖は、モアナが憧れ続けていた海へみなで旅立ち、遠くの世界へと旅を繰り返していたのです。

海へ舟を漕ぎだし、遠くの世界に行きたい」という心からの願望と

先祖の思いを受け継ぎ、島の人々を大切にしたい」という彼女の意志が

見事に噛み合った瞬間です。

例えるならば、「美しい貝殻を手に入れながら、子ガメ助けられる」そんな状況だと言えるかもしれません。

そんな夢のようなことが現実に叶うのだと感じたモアナの喜びと興奮は計り知れないほど大きなものであったことでしょう。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

このときのモアナの表情や言動から
彼女の喜びの大きさがひしひしと伝わってくるよ!
モアナにとって、まさに夢がかなったような瞬間だね!

先祖たちが舟を使って大海原を勇敢に旅する姿
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Yoshito Fuchigami, Hiroaki Takeuchi – もっと遠くへ (From “Moana”)


その後、祖母タラからテ・フィティの心を受け取り、自分が「海」に選ばれた存在だという真実を知るものの、自分がなぜ海に選ばれたのかわからず、疑問は残ります。

本当は「海」がモアナを選んだ理由や意図などについても語りたいのですが、ここで語るとあまりに長くなるため、「海」についての考察は次々回の記事にまとめます。

そんな中、祖母タラの死に際に、島に迫る危険を止め世界を救うため、「マウイを探し出し、彼を連れてテ・フィティの心を返しに行かせる」という使命を託されたモアナ。

彼女は、祖母タラから託された使命を果たすために、一人暗い海へと旅立ちます。

自分の中にある「海や外の世界への憧れ」の正体が、遠い先祖から受け継いだ、自分自身の本当の姿だということを自覚しながらも、「課せられた使命を全うして世界を救うため」に海へと旅立ったのです。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

ここでの彼女の決断や行動は

16歳の少女とは思えないよ…!
このときの

「どの道を進んでも、決めたのは私自身」

という歌詞が、モアナの人としての強さを物語っているね!

ここでの大きなポイントは、先ほどのシーンで彼女が大いに喜んでいた

海へ舟を漕ぎだし、遠くの世界に行きたい」という心からの願望と

先祖の思いを受け継ぎ、島の人々を大切にしたい」という彼女の意志が

噛み合った結果の行動ではないことです。

モアナは、愛する家族や島の人々を守るため、この世界を救うため、祖母から託された使命を果たすために旅立ちます。

彼女の旅の目的は、自分の夢を叶えるためでも、自分の願望を満たすためでもなく、「祖母や海から期待された役割」を全うするために旅立ったのです。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

ここでのモアナの旅立ちの理由を理解しておくことが

のちに描かれるモアナの大きな成長を感じ取るために

とっても重要だと僕は思っているよ!

(つまり、初見時には僕はこのことをうまく飲み込めないまま観てしまっていたってことだね…)

タラおばあちゃんから大いなる使命を託されるモアナ
ディズニープラス公式 Youtube
モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


旅立ちと試練

祖母タラの助言を受け、モアナはついに海へと漕ぎ出します。

しかし、彼女の旅は決して順調なものではありませんでした。

最初は帆の扱いもままならず、海の厳しさを思い知らされる場面が何度もあります。

特に、海へ出発したばかりの頃に目立つのは、祖母タラから言葉を一言一句違わず唱え続けている様子です。

モアナ
モアナ

私はモトゥヌイのモアナ
私の舟に乗り、この海を渡って、テフィティの心を返しに行くの

このセリフを繰り返していることからも、彼女の旅の目的が

世界を救うという大いなる使命を達成すること

であり、幼い頃から憧れていた大海原への自由な航海とは到底異なることが伝わってきます。

モアナは、必死に祖母から託された使命を全うしようとしているのです。

使命を背負い、危険な夜の海へ旅立つモアナ
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モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


しかし、「海に選ばれた自分ならできる」という自信は、他でもない「海」によって削られていきます。

慣れない航海の中、どうにか自分なりの方法で舟の操作を進めるも、夜の嵐に巻き込まれてしまうモアナ。

彼女はそこで、すぐに「海」に助けを求めますが、「海」は手を貸してはくれません。

嵐で荒れる夜の海に揉まれ、モアナはとある島に流れ着きます。

ここでも、モアナは「海」に対して、

モアナ
モアナ

助けてって言ったのに、舟をひっくり返すなんてひどい!
この役立たず!

と悪態をつくのです。

祖母の話では、自分は「海」に選ばれた存在のはずなのに、「海」はなかなか手を貸してくれない

まともに舟を操縦して目的地へ進むこともできない自分を、なぜ「海」は選んだのか。

「海に選ばれた」という自信が、当の「海」によって否定されていくかのような感覚を覚え、不安に思ったことでしょう。

その後、流れ着いた島はマウイの島であることがわかり、実は海がモアナに手を貸していたことがわかります。このことについても、詳しくは次々回の記事で語ろうと思います。

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モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


そんな中、彼女は伝説の英雄である半神半人マウイと出会います。

モアナは自分の使命を伝え、協力を求めますが、マウイは彼女を一蹴し、全く取り合おうとしません。

そんなマウイのとある問いに、モアナは顔をしかめます。

マウイ
マウイ

「海がそんなに賢いなら、

自分でテ・フィティの心を返しに行けばよかったんだ」

「それか俺に釣り針を持ってくるとかさ」

海ってやつは何を考えてるんだか

風と海を司る半神半人であるマウイでさえ、ましてや、「海」に選ばれた張本人であるモアナでさえ、「海」が考えていることがわからないのです。

モアナ
モアナ

理由があって私を選んだはず…

祖母から託された使命を果たすため、求められている「世界を救うという役割」を全うするために、強い使命感に燃えて島を出発したモアナ。

勇敢な行動が目立つ彼女の中にも、「自分に成し遂げられるのか」という不安が押し寄せているのです。

このとき、モアナは、「自分は、他の人にはない何かを持っている特別な存在のはずだ」と思っていたのかもしれません。

「海」に選ばれ、世界を救う役割を運命づけられたのだから、自分は特別なのだ、と。

ただ、その具体的な理由にはなかなか辿りつけません。

「特別な存在であってほしい」という願望と、「特別な存在などではない」という不安で、彼女の心は揺れていたのではないでしょうか。

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モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


魔物の国「ラロタイ」から帰り、釣り針を取り返したモアナとマウイ。

釣り針の能力を十分に引き出せず、すべてを諦めているマウイに対して放つセリフは、モアナ自身が、きっと誰かに言われたい言葉だったはずです。

モアナ
モアナ

神々があなたを見つけたのには、きっと理由がある

けれど、あなたをマウイにしたのは神々ではなく、あなた自身

神々に見つけられた理由はあるかもしれないが、人々の願いを叶えたり、希望を与えたのは、マウイ自身による功績だ、というメッセージ。

この言葉をモアナ自身の立場に置き換えると、

「海」に選ばれた理由はあるかもしれないが、人々の願いを叶えたり、周囲に希望を与えたのは彼女自身にによる功績だ、となります。

半神半人であるマウイと、小さな島に住むまだ幼い少女。

目的や考え方、存在さえもまるで異なっているように見える2人が、似たことに悩んでいたことがわかります。

この場面のモアナは、純粋にマウイを気遣って彼を励ますように言葉をかけていますが、自覚こそないものの、自分の悩みに対する答えを既に導き出せているのかもしれません。

ディズニープラス公式 Youtube
モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


しかしその後、テ・カァとの戦いでは、自分の力を過信した結果、マウイの大切な釣り針を半壊させてしまうという大きな失敗を犯します。

釣り針が半壊した後の2人の会話(ディズニープラス 日本語訳 参照)

マウイ
マウイ

俺は”引き返せ”と

モアナ
モアナ

私たちなら行けると…

マウイ
マウイ

私”たち”?

モアナ
モアナ

私なら行けると…

この場面でのモアナの行動は、決して責められるべき行いだとは言えません

テ・カァが水に弱いことを見抜き、隙を突こうと果敢に挑む姿は、むしろ称賛されるべき行動のようにも思えます。

しかも、彼女はそんな失敗をしたあとも、すぐに立ち上がり、再度挑もうとするのです。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

一見すると、モアナの行動って
何も間違っていないように見えるよね…

しかし、ここでとても重要なのは、彼女が

自分の力を過信したこと」と

自分の使命を叶えるために他人を犠牲にしていること」です。

彼女は、自身を特別だと思いたい一心から、自分の選択は正しいと信じようとする思いが先立ち、結果、自分の行いは絶対に成功するのだと過信してしまったのかもしれません。

また、自分に課せられた役割を全うするために、マウイにとって命よりも重要な存在(釣り針)を傷つけ、自分の使命を果たすために彼の行動を強制しようとしてしまいました。

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モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)


この出来事は、モアナに「失敗した経験」と「マウイに対する罪悪感」を生み、使命感だけで突き進んでは成功しないことがあることを痛感させます。

モアナのもとを去ろうとするマウイに、「私は選ばれたの!」と悲痛な声で訴えるモアナ。

ここで出てくる言葉が、

世界を元通りにしたいの!」や「島の人々を助けたいの!

といった言葉ではないことからも、

「自らに課せられた役割を全うしなくてはならない」という義務感、使命感に押しつぶされる彼女の苦しさが伝わってきます。

失意の中、目の前に姿を現す「海」に、涙を流しながら訴えるモアナ。

モアナ
モアナ

私じゃなかったみたい
他の人を選ぶべきよ
お願い…
私じゃない、誰かを

重い責務を果たしきれないという諦めの言葉ですが、どこかそれを「海」に否定してほしいようにも見えます。

しかし、「海」は、モアナからテ・フィティの心を受け取ります。

このとき、モアナに課せられていた「世界を救う」という使命が、彼女から失われます

島を出発し、遠くまで旅をしてきた際に原動力となっていたのは、「自分に課せられた役割を全うする」という使命感でした。

けれど、使命を失ってしまったモアナには、もう「海を渡る理由」がなくなってしまったのです。

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モアナと伝説の海 | 予告編 | Disney+ (ディズニープラス)

本当の自分を見つける瞬間

全てを失いかけたモアナは、祖母タラの魂と再会し、「お前に重荷を背負わせた」と謝られます。

しかし、祖母は謝罪を告げるためにモアナの前に現れたわけではありません。

祖母タラ
祖母タラ

はるか旅をして苦しんだから
どこにいるのかがわかるの
今までのことが導いてくれる
お前の心が問いかけてくれるはず
さあ、聞くんだよ

お前は誰か

島を離れ、遠くまで旅したモアナは、多くの苦難を乗り越えてきました。

そんなモアナだからこそ、島では得られなかった学びをたくさん得てきたはずです。

この場面で、改めて登場する言葉が「心の声」。

「心の声」については、映画冒頭の歌唱曲の中で、既に祖母タラがモアナに告げています。

心の声こそが本当の自分

それでは、モアナにとって、心の声とは何なのか?

絶望するモアナの前に現れ、問いかけるタラおばあちゃんの魂
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Mari Natsuki, Tomona Yabiku – モアナ (From “Moana”)


それは、「期待される役割を全うすること」でも「大いなる使命を達成すること」でもありません。

彼女の心に響く声は、あの時から変わらず、

海が自分を呼ぶ声と、

かつて大海原を航海してきた祖先が呼ぶ声なのです。

モアナは、幼い頃から、なぜ海は私を呼ぶのだろうと疑問を抱え、「海」に選ばれたあとも、なぜ「海」に選ばれたのだろうと悩み続けてきました。

しかし、彼女を呼んでいたのは「彼女自身の心の声」であり、彼女の意志だったのです

モアナは、「海」に選ばれ、村長として祖先から役割を引き継がなければならないから海へ出るのではなく、

彼女自身が心から願うからこそ、海へ出て、祖先の思いを受け継ぐのです。

この瞬間、彼女の行動は使命感ではなく、完全に自分の意志によるものへと変化します

選ばれたからやる」のではなく、「自分が本当にやりたいからやる」のだ、と。

彼女は再び海へ向かい、「私はモアナ!」と力強く宣言し、テ・フィティの心を返す決意を固めます。

「テ・フィティの心を返しに行く」という行動はこれまでと同じであっても、完全なる自分の意志によって決めた行動は、これまでとは大きく違うように見えます。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

タラおばあちゃんに背を向けて
「私はモアナ」と高らかに宣言するこの場面。
モアナがようやく義務感から解放されて
自分自身から溢れ出る強い意志が感じられるね!

モアナはこれまで、「マウイをテ・フィティのもとまで連れていき、心を返させる」という目的で舟を漕いでいました。

しかし、自分で海へと潜り、「海」の力も借りず、自らの手でテ・フィティの心を掴んだあとは、「私がテ・フィティの心を返しに行く」に変化しています。

他者に託され、期待された役割を全うするのではなく、自分の願望を自分の力で叶えようとする彼女の表情には、力が満ち溢れています。

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Mari Natsuki, Tomona Yabiku – モアナ (From “Moana”)


心の声に従って生きる

心の声に従うことに決めたモアナは、テ・カァとなってしまったテ・フィティに心を返すクライマックスシーンで、彼女に語り掛けます。

モアナ
モアナ

自分の姿に惑わされないで

そんなのあなたの本当の姿じゃない

本当の自分を見つめて

決められるのはあなただけ

ここでのモアナの発言は、心を奪われ、テ・カァへと変わってしまったテ・フィティに対し、

自分を見失った姿や行動は、他人を傷つけてしまう。

そんな自分を変えられるのは、自分だけ。

というメッセージを投げかけています。

この言葉は、まさにモアナ自身がこの旅で得た学びに他なりません。

彼女自身、自分の心の声を見失い、義務感に捕らわれた行動を続けてきました。

しかし、その行動によって、マウイという大切な仲間を深く傷つけてしまいます。

そんな彼女を変えられたのは、彼女自身だったのです。

悪魔(テ・カァ)へと姿を変えてしまったテ・フィティへ心を返すモアナ
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Tomona Yabiku – 自分をみつめて (From “Moana”)

その後、世界を救い島に帰ったモアナは、島の人々とともに、新しい島へと大海原を渡る冒険の旅に出ます。

島の人たちが忘れてしまった、自分たちの在り方を、彼女が思い出させているのかもしれません。

島の最も高い場所に積まれた、歴代の村長の石。

その一番上には美しい貝殻が置かれています。

ミンキー隊長
ミンキー隊長

海への憧れ」の象徴である貝殻と
先祖から受け継いだ島を愛する心」を象徴する石とが

見事に調和された証拠だね!

一番上に貝殻が置かれたことで、今後新たに石を積むことは難しくなったように見えます。

モアナの後を継ぐ村長が、この貝殻の上に石を積むことはないのでしょう。

きっと、新しい島へ旅立った彼らは、新しい楽園を自らの手で作り出すことができるはずです。

村長の石の一番上に置かれた美しい貝殻
DisneyMusicVEVO Youtube
Lin-Manuel Miranda, Opetaia Foa’i – We Know The Way (Finale/From “Moana”/Sing-Along)


まとめ

モアナの成長 まとめ
  • 幼少期
    海への強い憧れ
    モアナは幼少期から海に強く惹かれていました。
    祖母タラの伝説を興味津々に聞く姿や、周囲が怖がる中で一人だけ目を輝かせる様子が描かれています。
    また、波打ち際で子ガメを助ける選択をすることで、彼女が「自分の欲よりも他者を優先する心」を持っていることが示されます。
    この瞬間、モアナは「海」に選ばれ、「テ・フィティの心」を託されます。
  • 冒険前
    海への想いと村を守る責任
    成長したモアナは、父トゥイから島の長としての役割を教えられます。
    村の繁栄を支える責務を知り、自らの役目を理解しようと努力しますが、海への憧れを完全には捨てられません。
    祖母タラから「心の声に従え」と教えられる一方で、父はサンゴ礁の外へ出ることを厳しく禁じます。
    この対立が、モアナの内面に深い葛藤を生み出します。
  • 冒険中
    旅立ちと試練
    祖母の死をきっかけに、モアナはついに海へと旅立ちます。
    道中、マウイと出会い、協力しながらも衝突を繰り返しながら成長していきます。
    試練を乗り越える中で、一度は挫折し、使命を諦めかけてしまいます。
  • 転換点
    本当の自分を見つける瞬間
    挫折しかけたモアナは、祖母タラの魂に励まされ、再び立ち上がります。
    ここで彼女は「私はモアナ」と高らかに宣言し、自分の心の声に従って生きることを決意します。
    自分の心に正直になることで、モアナは真の強さを手に入れます。
  • 冒険後
    心の声に従って生きる
    テ・フィティの心を返し、島に平和を取り戻したモアナは、村を導くリーダーとして新たな一歩を踏み出します。
    「海に出たい」という夢と「村を守る」使命を両立させる道を見つけたのです。
    物語の終盤、モアナは海へと漕ぎ出し、新しい未来へと進んでいきます。

次回予告

今回は、『モアナと伝説の海』を鑑賞して抱いた3つの疑問を解消するために、モアナの成長と変化について考察しました!

リスキー隊員
リスキー隊員

①「私はモアナ」の意味とは?
②マウイはなぜモアナのもとへ帰ってきたのか
③「海」の存在とはなんだったのか

のうち、①の疑問が解消されたね!

クマキー隊員
クマキー隊員

なんとなく感動的だと思ってたシーンに

より一層、深みが増した気がするクマー!

ミンキー隊長
ミンキー隊長

モアナが抱く悩みや葛藤は
決して彼女だけの特別なものではなくて
誰しもが抱えうるものだよね!
モアナの成長の様子から、多くのことを学ぶことができたよ!

  1. 作品の概要 
  2. 初見時の印象と疑問 
  3. モアナの成長と変化 ←(今回の記事)
  4. マウイの成長と変化
  5. 「海」の変化
  6. 音楽の魅力
  7. 映像の魅力
  8. その他の登場人物
  9. 物語の終わり&次回作へ
  10. 作品の疑問点

次回の記事からは、モアナの相棒であり、風と海の守り神でもある、半神半人のマウイに焦点を当てて本作の魅力を掘り下げていきます!

このブログでは、あくまで筆者が自由勝手に解釈したことを解説しています。

もしも、私とは違う解釈を持っていたり、他に気付いたことなどがあったりする方がいましたら、ぜひコメントにて教えてください(^^)/

それでは、また次回の記事でお会いしましょうー!

↑前回の記事↑

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